手すりの虫観察ガイド: 公園・緑地で見つかる四季の虫

とよさき かんじ (著)

文一総合出版

タイトルを見て「やられた!」というのが第一印象。いきなり野山に行くのはためらわれるが、外で虫を観察したい人向けの本じゃないか?だとしたら、すごい着眼点だ。

手にとってページをめくると、はじめにで、『「どこから探していいのかわからない。(中略)」と数年前の私はそう思っていました。』ということばで「確信犯や」と確信。今まで生きものをあまり野外で見たことがない人にとって最初の一歩はかなり高いハードルだ。やっぱりこれを超えさせるために作られた図鑑だった。だからとにかく初心者への配慮が行き届いている。多くのイラストで、行動や見分け方が感覚的にわかるように工夫されていて、この本の味にもなっている。

扱うのを「虫」として、昆虫以外のクモなども含まれていて、数ミリの虫も容赦なく紹介されている。これまで初心者向けの図鑑は、チョウやトンボ、カブトムシ、クワガタといった誰でも知っている虫を、専門家ならだれでも知ってる内容で簡単に紹介するだけの図鑑が多かった。しかし、初心者といえどもマイナーな(あまり知られていない、小さい)虫を美しいとかかわいいとか思う感性は充分に持っていて、「なめんな!初心者を」と著者が代弁しているような迫力を感じた。(個人の妄想です。そんな意図がなかったらゴメンナサイ)

といいつつ、自分もタイトルを見たときにはまだまだナメていた。「所詮手すりにいる虫なんて大した種も種数もいないだろう」と思い込んでた。ページをめくると、こんなにもいろんな虫が手すりにいるもんだと、ただ驚いた。これだけの写真を撮るには、どれだけフィールドに出て虫を見ていることか。これからは”舐める”ように”観察”しようと思います。

手すり虫に私が好きなクワガタも紹介されていて、セットで放虫問題が簡潔に説明されている。飼育したときに出るマットの処理について、野外に捨てないよう具体的に記述してるところも、初心者に親切だ。

最後に、この本のもう一つすごいところは、シリーズ化できるということ。例えば、「便所の電気に集まる虫(便電の虫)」とか。次の本も期待!