標本は100年以上の長期保存に耐えられるように作成するもの。

台紙やラベル、針に耐久性があっても糊も耐えられなければ100年後はゴミ、そうなりかねません。

苦労して展足・マウントした標本が、数十年でダメになってしまうと想像するだけで悲しくなります。

虫たちにも申し訳ない。

そして、標本は全人類の財産です。長く残さなければならない使命もあるのです。

従来の糊の耐久性

最も一般的に使われている木工用ボンドは酢酸ビニル樹脂(合成樹脂)が原料のため、長期間の耐久性が問題視されています。ニカワ(膠)は数百年前の標本も残っているので、長期保存の観点からニカワを使う方もいらっしゃいます。(私も近年はニカワがメインでした)

ニカワ(膠)の使いづらさ

でも耐久性が高いニカワには使いづらいことがあります。

例えば、

  • すぐに乾燥してしまう
  • 乾燥後、台紙から虫体が落ちやすい(乾燥すると割れる)
  • 糸を引く

などです。

いくら耐久性があっても、使いづらければ美しい標本を作れなかったり、余計に時間がかかってしまいます。

耐久性と使いやすさを兼ね備えた原料とは?

そこで、もっと使いやすく、長期保存に耐える原料を探しました。原料は合成樹脂ではなく、ニカワ同様の自然素材から選びました。

そこでたどり着いたのが多糖類(自然素材)です。

同じ多糖類糊にはでんぷん糊や米糊があります。米糊は漆と混ぜて輪島塗の原料になっており、現存する最古の輪島塗(重蔵神社の朱塗扉)は室町時代(500年以上前)に作られたものです。これをヒントに多糖類糊にたどり着きました。

また、室町時代に作られた仏像が今でも実在するとのこと。これは寄せ木を米糊で接着してから彫刻して作られたものです。

近年では、耐久性と接着力、安全性などの観点から住宅の木材の貼り合わせなどにも使用されています。

日本の気候での耐久性

日本は高温多湿になるので、標本を維持するのが難しい場所です。ヨーロッパのように湿度が低い場所で長期保存できたとしても、日本でも同じように長期保存できるかどうかはわかりません。

多糖類糊を使った輪島塗や寄せ木の仏像は、空調管理がない時代から日本の気候で数百年の耐久性が確認されています。

まとめ

日本の高温多湿の夏を何百回も乗り越えられることを歴史が証明してきた多糖類糊。本商品も多糖類糊なので、長期間の耐久性が期待できます。