本商品の開発にあたり、もう1つの目的が時短でした。時短できれば、より多くの標本を作れたり、採集やブリード、他の趣味やアルバイトに使うことも可能です。
1個の標本を作成するのに10秒の時短ができれば、年間1000個の標本を作る人なら1年で167分、１０年で1667分（27時間以上）短縮できます。あなたならこの時間をどのように使いたいですか？
目次
3つのこだわり
3つのこだわりポイントで時短できるようになりました。
- 容器
- 糊の固さ
- 乾燥時間
それぞれについて説明します。
(1)容器
筆を使わず、糊を容器から直接出して使用できます。筆や水を準備する必要も筆を洗う必要もありません。これだけでも時短になります。
これを実現するために、容器もセットで販売することにしました。
今までは、木工用ボンドやニカワの場合、
容器から出して筆で必要量を取り、台紙や標本に糊を付ける
といった使い方が普通でした。
ベテラン虫屋さんからの貴重なご意見もいただきながら、様々な容器を試行錯誤した結果、ベストな容器を選び抜きました。もちろん、従来通り筆を使うことも可能です。
極細ノズル付きボトル
筆を使わずに糊を塗ることができるよう、ノズル容器が付属しています。使用前にノズル容器に詰め替えてご使用ください。
用途：
- 虫体が5mm以下の場合
- 外れたパーツの接着
- 跗節や触角を台紙に貼り付けて展足する場合
使用上の注意：
- 長期保管すると、容器の特性上、ノズルが詰まることがあります。ノズルが詰まった場合は、シリコンキャップを外した状態で数時間以上ノズルを水に浸け、ノズルに針を刺して詰まりを取り除いてください。
- ノズルが固定されていないため、（シリコンキャップを外すときに）抜けることがあります。その際は、再び挿し込めば使用できます。抜けるのが気になる方は瞬間接着剤で固定する方法もあります。
(2)糊の固さ
ノズルからの出方も時短に重要な要素です。出方に影響するのが、糊の固さです。
原料の性質上、木工用ボンドより軟らかいので、ノズルからスムーズに出てきます。そのため、細く、均一に塗ることができます。
木工用ボンド、ニカワ、水のり（ポリビニルアルコール）と比較した動画がこちら↓
いくら容器が使いやすくても
- ノズルがすぐに詰まってしまったり
- 糊の出が悪かったりすれば
使いづらくなります。
容器に合うよう粘度を調整しています。
ノズル容器の場合、少し力を入れれば出てきます。
(3)乾燥速度
標本を大量に作成する場合、一度に複数の台紙に糊を付け、次々に虫体を貼っていくのが効率的です。
その際、すぐに乾燥してしまう糊だと一度に糊付けできる台紙の数が少なくなり効率が悪くなります。
本商品は、従来の糊に比べて乾燥が遅いのが特徴です。粘度を上げると乾燥しやすくなるのが通常ですが、それぞれの原料の特性と配合など、様々な条件を試行錯誤して最適解を見つけ出しました。
ご参考までに25℃、湿度40％では、約7分間は貼り付けることができました。10分後には表面が乾燥して付かなくなりました。乾燥時間は主に湿度が影響します。ですので、日本では冬の方が早く乾燥します。（温度が高い夏の方が早く乾燥しそうなイメージですがそうではありませんでした）
もちろん、糊の量も乾燥までの時間に影響します。ごく少量ですと冬場はすぐに乾燥します。ですので、空気が乾燥しているときに少量で使用すると糸が引くことがあります。
数時間でほぼ固まりますが完全乾燥には数日かかります（特に夏場）。とはいっても、粘度が高いため乾燥までに標本が動いてしまうことはありません。（台紙に通常貼らないカブトムシのような超巨大昆虫は除きます）
時短になっているか実験（改良前）
実際に時短になっているか、最も一般的に使われている木工用ボンドと比較してみました。それぞれの作業を動画撮影し、かかった時間を計測しました。以下のデータは改良前の糊での比較ですが、永代の絆と同様とお考え下さい。
木工用ボンドは、①水彩絵の具のようにいったん、プラバンなどの上に出してから筆になじませて（準備）、②台紙にボンドを付ける、の2段階なので、それぞれ分けて計測。実際の作業時間は①+②となる。
本商品は、容器から直接出して使えるので、②のみ。こんな感じ↓です。
台紙に糊を付ける方法は2パターンで検証。台紙に糊を付ける時間のみ計測
●Aパターン：台紙に糊を付けてから、標本を乗せ、台紙に針を刺す。（作業中に台紙を蹴散らしてしまわないように、今回は台紙を両面テープで固定して実験。）
Aパターン
●Bパターン：あらかじめ台紙を針に刺しておいて、台紙に糊を付けて、標本を乗せる
Bパターン
本などではBパターンがよく紹介されていますが、私は普段Aパターンでやっています。
Aパターン、Bパターンとも、台紙10個にのりを付ける時間を計測。木工用ボンドと本商品それぞれ3反復。
■結果（表）■
●Aパターン
【木工用ボンド】
中央値62秒、平均61秒
（準備無しだと）、中央値45秒、平均46秒
【改良前本商品】
中央値25秒、平均24秒
●Bパターン
【木工用ボンド】
中央値65秒、平均65秒
（準備無しだと）、中央値49秒、平均50秒
【改良前本商品】
中央値29秒、平均29秒
時短実験のまとめ
◎Aパターン、Bパターンとも、自作のりの方が30秒程度早かった（作業時間は5～6割減）。
いずれも、中央値と平均の差は小さく、ばらつきは少ない。
台紙から取り外すのも時短
本商品は水に溶けやすいので、台紙から外すのも時短できます。
特にオススメなのは、水の代わりにアセトンを使用すること。そのメリットは、
- 水より早く剥がれる
- 虫体に糊が残りにくい
- 展足が崩れにくい
詳細はこちら
時短まとめ
上記3点にこだわった結果、私の場合、作業時間が5～6割削減されました。（筆を洗う時間が含まれてないので実際はもっと短縮）
10時間かかっていた作業なら5時間以下になったということです。
この時間をより多くの標本作成や他の趣味など好きな時間に充てられるようになりました。思っていた以上に時短でき、最大の目的を達成しました。