昨年からお世話になっている、京都府立宮津高校フィールド探求部の顧問、多々納さんから、表題の本をいただきました。

海の京都・丹後の巨樹ものがたり

「海の京都・丹後の巨樹ものがたり」編集委員会

pp.137

丹後の巨樹2700本以上の調査結果と、郷土の歴史や自然、民族などが見事にまとめあげられている。おそらく非売品?のレア本なのも嬉しい。

「これだけのデータを良く取ったなあ」というのが正直な感想。

2700本もの巨樹データ

中でも、この本の約半分(第一部)にスペースを割いた2700本もの巨樹のデータが圧巻。(下写真)

「海の京都・丹後の巨樹ものがたり」巨樹のデータ

表には、所在地、樹種、周径、様態、所在地の緯度経度でびっしり。空いたスペースには写真をはめ込むほどの詰め込み具合。

その中から厳選された巨樹中の巨樹がA4サイズのページいっぱいに紹介されていて、これもまた圧倒される。ついつい、「お~」と声が出る木が何本もあった。木の大きさや樹形から周囲の環境を想像するのも楽しい。

大学時代から昆虫採集や生物観察のために全国の環境が良い場所にはかなり行って来たが、丹後には子供の頃に行ったきりで、当時は知識もなく記憶も少ないので、こんなにも良い環境があるとは知らなかった。。。

豊富な巨樹の写真

生徒さんたちの行動力が光る

また、地域の自然の中で研究した生徒さんたちの研究成果もまとめられていて、これはこれで貴重なデータになっている。

生徒さんたちの研究成果

ここまで徹底的にフィールド調査に拘った本はなかなか貴重だ。自分たちで足を運び、巨樹の存在を通して地域の歴史や文化にふれることで、より楽しく、より深くものごとを理解するためにこそ体を使って行動する大切さは、本人たちが一番実感できたのではないかと思う。

調査したりまとめるのは大変だっただろうけど、こういう経験は絶対に将来にすごく役に立つ。

そして、何より写真に写っている生徒さんたちの楽しそうな顔だけで十分にそれが伝わってくる。

気になった箇所

いくつか気になったところを。改訂版でもっとパワーアップしてもらえればと思います。

データ

巨樹のデータに調査年月日が欲しいです。スペースの都合で省略されたのかもしれないですが。「周径」などは年によって変わるデータなので、このデータをいつ取ったかがわかると、データの価値がより上がる。何年か後にデータを取り直して、どのくらい大きくなったか(小さくなったか)を調べてみたりするのも面白そう。

もっとも、「周径」は測る場所でかなり変わる(バラツキが大きい)ところが難しいところ。

あと、「周径」と書かれているが、生物では使っているのを知らない。環境省のリーフレットでも「幹周」と書かれているし、「周径」は曲面の周囲の長さを指すので間違った使い方ではないが、一見、図った場所の直径のように思えるので、「幹周」の方が良いと思います。

樹種の和名表記

植物の和名は標準和名で統一した方が良いと思います。私も普段呼ぶときはトチと言っていますが、本などにする場合は標準和名が良いでしょう。できれば、学名一覧があるともっと良いのではないでしょうか。和名はいくつかあったり方言があったりするし、時代によって呼び方が変わったりするものですが、学名が書かれていれば変更があった場合でも遡って調べやすいですね。

  • ホオ → ホオノキ
  • トチ → トチノキ
  • タブ → タブノキ
  • シイ → スダジイ
  • カシ → シラカシ

など

奥付

これだけのデータが載っているので、後に引用されたりすることも考えると、

  • 正式な書名
  • 出版年月日
  • 出版元
  • 総ページ数

のような情報が奥付にまとめてあると、利用しやすいです。

まとめ

丹後半島はちょっと遠いので今まで行けていなかったけど、こんなにも自然に恵まれた魅力的な場所というのがよくわかりました。

ちょうど今年行ってみようと思っていたので、ますます楽しみになったのですが、コロナの状況によっては断念せざるを得ないかも。

ご高著をありがとうございました。