日本のクワガタムシハンドブック
横川忠司 (著)
単行本: 80ページ
出版社: 文一総合出版 (2008/7/18)
発売日: 2008/7/18
ご好評のため、絶版となりました。わずかに在庫がございますので、入手希望の方はお問合せください。
80ページの本書が、「クワガタムシハンドブック 増補改訂版」となって128ページに大幅増ページして発売されます(2019年6月)。
専門家による書評など
吉富博之氏 (愛媛大学 農学部 環境昆虫学研究室 助教)
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楽しい図鑑がまた出た。
KUWAKIRAの日常
本州に生息するクワガタがハンドブックらしからぬ大きな標本写真で示されている。本書の特徴としては亜種を一切無視し、種を単位としている。潔い。
ルリクワガタ属については著者の思い入れと考え方が出ていて、種や和名の扱いには今後論議を呼ぶだろう。私は感覚的に今回著者が示した扱いは受け入れ易いと思った。しかし分類学的再検討が必要だろうし、コンセンサスを得られるかは解らない。
私は買いだと思ったが、一般ウケはどうだろうか?亜種を無視しているので、種や亜種についての知識が無いと混乱するかも知れない。
ある意味、マニア向け・マニアウケする本かも。
気付いたミスは著者にメールで知らせた。改訂版では直るだろう。
丸山宗利氏 (九州大学博物館 助教)
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日本本土のクワガタムシを中心としたハンドブックで、本土のクワガタムシが確実に簡単に同定できる画期的な図鑑である。画期的な点は他にもあって、それは著者の冷静な判断による「正しい」分類体系の提案である。その点にいろいろと共感するところがあって、気持ちよくページをめくった。
断虫亭日乗(2008年8月8日)
まず乱立しいる亜種をほとんど無視し、種ごとの解説のみを行っている点がすっきりしていてよい。その他、当初亜種として記載されたにも関わらず、詳細な検討無しに種へと昇格させられている「ハチジョウノコギリクワガタ」を従来どおり一亜種とみなしており、当然これも詳しく解説していない。また、最近「キイルリクワガタ」、「シコクルリクワガタ」、「キュウシュウルリクワガタ」と地域ごとに別種に細分されたニセコルリクワガタを、細分に根拠が乏しいとし、旧体系のままニセコルリクワガタ1種として扱っている。さらに噂の「タカネルリクワガタ」の記載顛末を批判し、タカネコルリクワガタと新和名を提案しており、このあたりも思い切りが良い。物議を醸し出すこと必至だが、私は強く支持する。同様の考えを持っていた人は多いはずである。なによりも、(多くの場合)意味不明の細分的な体系よりは、一般の人たちにずっと理解しやすい。
ただし南西諸島や離島の種についての同定解説に乏しい点は少し寂しい。本書の題を掲げるならば、それらの種についても本土の種と同等に解説して欲しかった。もちろん、このシリーズのページ数の制限についてはわかるが。種同定以外では、飼育法、採集法の簡単な紹介がある。また、なかなか説明の難しい外産種問題に関する解説もあり、これは一般の人にもすっきりわかりやすいと思う。
中島淳(おいかわ丸)氏
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たまには書評です。昨年に出版されましたこの本は各地で好評で、いまさらここで紹介するまでもないのですが、そろそろクワガタシーズン到来ということで、ここで紹介しておきます。
湿地帯中毒(2009年5月30日)
文一総合出版のハンドブックシリーズはコンパクトながらマニアックな点も確実に抑えておりなかなか優れものが多いのですが、その中でもこのクワガタムシはかなりのレベルといえるでしょう。ハンドブックという体裁をとっているためページも少なめで、本土の種に絞ってありますが、その内容の濃さは一見の価値があります。こういう入門系の本では、恐ろしいほどの実力者が削りに削って1/10くらいに濃縮し、一般向けに展開したという「濃縮還元的」なものほど読み応えがあり内容も素晴らしいものです。そして、この本はまさに濃縮還元的な香りを漂わせていて、一見ハンドブックとして一切の無駄を排しシンプルに構成されているものの、見る人が見ればその端々に圧倒的な知識と経験を練りこんであることがおわかりいただけることでしょう。各種の雌の違いだとか細かいところにも手が届いており、巻末では標本作成法や外来種問題にも触れてあります。クワガタ入門用として多くの人に手にとってほしい本といえます。願わくば、南西諸島編もその2という形で出してほしいものです。
ところでこの本の著者Y氏は私の大学サークル時の先輩です。当時武闘派として知られたY氏に私は学部一年の時に八重山諸島に連行され強制労働昆虫採集のイロハを教えていただきました。思い出深く、忌まわしい懐かしい日々です・・。実はあの頃が人生の分かれ目だった気がしないでもありません。