スーパーサイエンスハイスクール 生徒研究発表会

2019年8月7日・8日

神戸国際展示場

文部科学省・科学技術振興機構が主催している「スーパーサイエンスハイスクール 生徒研究発表会」に行ってきました。

プログラム

このイベントは毎年神戸で開催していて、全国のスーパーサイエンスハイスクールから各校1つの研究が発表されます。初日は基調講演とポスター発表、2日目は口頭発表とポスター発表になっています。

初日のポスター発表を見学しましたが、とにかく熱気がすごい!

熱気のある会場

人が多いのもありますが、ポスターが貼ってある各ブースでは、熱い発表と質問が飛んでいました。ブースの前を通りがかると、「聞いて行ってください!」と積極的にアピールしている学校も。そう言われたら聞かないわけには行きませんね。

私は生物に関する研究を中心に見て回りました。それぞれのブースにはポスターだけでなく、実際に調べた生きものの標本やポスターに入りきらなかったデータ、参考にした文献、パソコンで動画の上映など、各校が工夫をこらした発表をしていました。さすが全国大会だけありました。

テーマも実に興味深く、さまざまな生物、分野、方法で行われていました。興味を持ったきっかけもさまざまなようで、子どものころから好きだった生きものを調べていたり、テレビで見たり特別講義で話を聞いた先生の研究に興味を持って始めていたり、最近注目されている生きものをしたものだったりと、多種多様でした。

中でも最も研究としてレベルが高かったのが、兵庫県立加古川東高校の「外的刺激に対するエダアシクラゲの発生学的応答」です。生物関係の研究ではずば抜けていました。

テレビでベニクラゲの「若返り」の研究に興味をもって始めたそう。この「若返り」をするのはベニクラゲからしか知られていません。そこで、近縁のクラゲでも同じようなことが起こっていないか、を調べ始めたのがきっかけ。このエダアシクラゲでは「若返り」は見つかりませんでしたが、口柄と傘の頂上部が隣接していると完全な個体に再生できることを発見していました。このような再生方法は他には知られていないようです。

新しい現象の発見もすごいのですが、この研究の一番すごいところは、この現象が正しいのかを調べた実験デザインの良さです。これまで見つかっていないものが存在することを、誰にも納得させる実験になっていました。それゆえに導かれた結論だったので、まぐれではなく実力で見つけたことに感心しました。そして、発表もわかりやすく整理されていて、すぐにでも学会で発表できる(国際誌に掲載される論文になる)レベルでした。質問もいくつかしましたが、的確な回答をしてくれたので、とてもよく理解できました。

正直なところ、高校生の発表では実験のやり方にぬけがあったり(特にコントロールがない研究が多い)、データ分析がされていなかったり、発表の整理の仕方が悪いといった、欠点がたくさんあるのですが、上の発表では、少なくとも私には、欠点は見つかりませんでした。(唯一あるとすればタイトルだけで内容がわかりにくいこと)

今回の発表を見ても思ったのは、教員の指導不足です。各校で1つしか発表できない研究なんだから、もっときちんと指導してあげてほしかった。忙しくて全グループの研究指導に手が回らないのも本当は良くないですが、せめて学校の代表なんだから。タイトルと内容が全然違うものすらありました。また、「考察」は英語で”Discussion”が正しいのですが、”Consideration”としている発表がいくつかあるなど、残念ながら、教員の指導力に問題を感じずにはいられませんでした。もちろん、研究の進め方、考察の仕方、発表のまとめ方などには問題山積でした。研究型授業がうまく行くかどうかは、教員の指導力にかかっていると私は考えています。

こういうのを考慮しても、研究を楽しんでいる生徒さんの表情は明るく、自信に満ちていて、高校生までに研究をさせる意義はとても大きなものと確信しました。大学に行ってもこの研究を続けたいと言っていた生徒さんも多く、これからの研究の進展も楽しみです。