先日、こんなご質問をいただきました。

捕まえたクワガタの種類を調べたいのですが、

本や図鑑ではなかなか一致したものが見当たりません。
どのように調べるのが良いのでしょうか?

同じようなご質問を毎年何回かいただくので、

クワガタの種名の調べ方(「同定(どうてい)」といいます)について詳しくお答えします。

同定ができない理由は主に3つです。

  1. 見分けるポイントが分かっていない
  2. 図鑑に載っていない
  3. 新種

クワガタの場合、3.はほぼないと思いますので、

残りの2つを詳しく説明します。

1.見分けるポイントが分かっていない


これがほとんどだと思います。次の順番で確認してください。

(1)触角を見る


昆虫に詳しくない人の場合、

クワガタの特徴として大あごを見るのが普通ですが、

クワガタを見分ける一番のポイントは触角です。

触角が「L」字のように折れ曲がっているかどうか確認してください。

一部例外はありますが、

お子さんが見つけられて素人がクワガタと思う種はすべてL字になっています。

また、

触角は昆虫全般で見分けるポイントとなるので、

まずは触角からみることを覚えておくと良いです。

(2)触角がL字になっているのを確認したら、明らかに違う種を除外します。

大あごが目立つので、一見するとクワガタに見える昆虫がいます。

例えば、カミキリムシやクロツヤムシなど。

これらの昆虫ではないことを確認するのに一番簡単な方法は、触角を見ることです。

ちなみに、「触角」は「触覚」ではありません。

角のように頭に付いているものなので、「角」が正しいと覚えておきましょう。

(3)分布


どこで見つけたかを確認してください。

島や標高などできるだけ細かい場所がわかるほうが良いです。

(4)体長


体長を測ってください。大あごの先端からお尻の先までの長さです。

これは誰でもできることですが、これまでの経験上、これをやらない人に限って間違った同定をしているように思います。

大きさがわかるだけでも、候補となる種はかなり絞れるので、必ず確認してくださいね。

(5)候補の確認


(2)で除外されなかった種の中から、

体長と分布が当てはまらない種を除外します。


体長は2~3mm程度の差で当てはまらない場合は除外せず、

候補に残してください。


図鑑の分布で生息する可能性があるか確認してください。

クワガタの場合は、小さな島でない限りどこにどの種が分布しているかわかっていますので、

該当する種を「すべて」書き出してください。

(6)各種の特徴の確認


ここまで残った候補の種の特徴を確認してください。

写真を見るより、説明文を読んで確認してください。

クワガタは個体差が大きいのですべての個体差を示す図鑑はありませんし、

写真は光の当て方や個体差などの情報も入ってしまう

(それを普通は認識できないですべて載ってると思ってしまう)ので、

説明文の「補足」や「確認」として見てください。


動き回って特徴がわかりにくい場合は、

写真を撮って拡大してみるとわかりやすい場合もあります。

2.図鑑に載っていない


まずこのようなご質問をされる場合には、

具体的にどの図鑑を見たのかを必ずご記載ください。


子供向けの図鑑では載っていない種が多いものもあります。

昆虫全般が載っている図鑑ならなおさらです。

その場合は、載っている図鑑(対象の昆虫だけが詳しく載っているもの)で調べていただく他ありません。


子供が見る場合でも、

子供向けの図鑑はあまりオススメしません。

特徴のポイントがずれているものがほとんどなので、

私たち専門家が使っても間違った結果になることが多いです。

手前味噌ながら、

私が作った「クワガタムシハンドブック増補改訂完全版」は日本全国のすべての種を載せ、

世界一同定しやすい図鑑と専門家からもお墨付きをいただいています。


その理由は、

1.で書いた内容を写真で示したり、

調べたい個体の体長が候補種の範囲に収まるか一瞬でわかるスケールを付けたり、

分布ごとに説明してあったり、

重要な特徴順に説明していたり、

インターネットなどで見かけた間違いをリサーチし間違いやすい種の特徴の比較をしていたりしています。


これらの特徴は、

30年以上にわたり、子供向けから専門家向けの図鑑まで集め、

分析して、

素人が見分けるために必要なことや見分けやすくするためにどうすればいいかを徹底的に追求して作成しているからです。


説明文は子供向けに書いていませんが、

大人であれば理解できる文章なので、

親御さんがお子さんに説明していただければコミュニケーションにもお使いいただけます。

実際、5歳のお孫さんがすっかり夢中になってしまって、

毎日読んでほしいとせがまれているお祖母様からお礼のメッセージをいただいたこともあります。

まとめ

最初はこんなにもやらないといけないのか、と思うかもしれませんが、

正しく同定するには正しいやり方でやる必要があります。

ここでは6つのステップを紹介しましたが、

慣れれば、一瞬でできるものも含まれているので、

実はそれほど大変ではありません。

また、1.~3.のどれが原因なのかをはっきりさせるだけで

問題はほとんど自分で解決できます。

これは、勉強や仕事でも同じです。

本質的には、なぜ同定できないのかを考えるところから始めることをおすすめします。

こういう作業を繰り返しているうちに

自然と違いがわかったり、問題解決ができるようになっていくものなので

ぜひチャレンジしてみてくださいね。

追記

後日、ご質問者の方からメッセージをいただきました。次のブログに掲載しています。