隠岐諸島西ノ島のニシコルリクワガタの論文が掲載されました。

横川忠司 (2020)  ブナ帯を完全に欠く山地でのルリクワガタ属の分布 ~隠岐諸島・西ノ島でのニシコルリクワガタの追加記録とその分布の意義~ 月刊むし (592):10-13.

 

昨年10月に採集したときのものですが、

このときはこの島での分布は知られていなかったのです。

西ノ島が属する隠岐諸島の島後(最高標高608m)からは

2005年に生息することが発表されて、

関係者を驚かせました。

なぜなら、この種を含むルリクワガタ属は、標高が800m以上のブナの原生林が本来の生息環境なのです。

こういう環境は、ふつう、標高が高い山が連なった山地なので、

それほど高い山がない島にいること自体が大きな驚きでした。

さらに西ノ島は、最高でも焼火山の452mしかなく、

ブナも生えていないことから、

長年、この種を探すためにこの島に行く人はいませんでした。

「島後でギリギリの環境だから、さすがに西ノ島にはいないだろう」と。

ただ、自分の中では何年もの間、

「本当にいないのか?」

という疑問が常に頭にあり、

モヤモヤとした状態が続いていました。

なので、現地でこの目でこの虫を確認したときには

「やっぱりいたのか!」

と喜び上がりました。

ニシコルリにとって環境が厳しいのは誰もがわかっていたので

分布していたとしても発見は困難なのがわかっていました。

とはいえ、無事に採集でき、論文として発表できて嬉しいです。

ニシコルリの生息環境については、

それまで知られていた隠岐諸島の島後との比較もして、

いかに西ノ島の環境が特殊なのかが科学的、客観的にわかるようになっています。

ぜひご覧いただければと思います。

生徒さんにはすでにお渡ししましたが、

pdfをご希望の方には差し上げておりますので、お問い合わせください。

たった4日の調査でも

こういうふうに科学的な論文としてまとめることが可能です。

科学の論文を書くのは難しいと思ってらっしゃる方がほとんどだと思いますが、

1つの事例として覚えておいていただければと思います。

と、ここまではとても順調だったのですが・・・

論文化に当たっての顛末は次のブログに書こうと思います。